ライター貸して

青すぎる夏の空の正しさに参ってしまったあと、私に勝手に参られる夏も空もたまったもんじゃないだろうなと思った。

「この世の誰も私のことを気にしていない」という誰かの言葉を「そんなの当たり前じゃない」と鼻で笑った人の孤独について、ときどき思いを巡らせる。私には想像もつかないような一人をたくさん越えてきたのだろう。鋭さと鮮やかさ、さびしさ。

好きな友達たちが死んでからもう何年も経つ。命日に友達の吸っていた煙草を吸う。その友達のことを想う時間は本当なのに、自分のためでしかない行為がすこし悲しい。私の感じるわざとらしさは、白々しさはなんなんだろう。あなたたちのこと本当に好きだったんだよ。

 

部屋の白い壁を見つめながら、私が消えてなくなるのを待っていた。意識が薄れることもなく、からだがほどけることもなく、どうやらこのやり方ではなくなれないらしい。

叫びだしたくなるような気持ちが生じて、叫びたいことは特にないから、ああああと叫ぶイメージをする。私からしてもうるさいし迷惑だと思うから、実際には叫ばない。頭の中を文字と声のイメージで埋める、他になにも考えないでいられるように、苦しい感じが薄まるように、ああああ、ああああ、ああああ。すこしでも自分から遠ざかれたらいいのに。

 

どうしようもないことはどうしようもないまま、どうしようもない気持ちもどうしようもないまま、過ぎていくのを待つしかなかった。待っていても過ぎていかないものもあるから、それが溜まっていってしまって、うずたかい澱が私のすぐそばにある。なにも考えていたくない、タバコを吸いたい、ライター貸して。