大学時代の友人とお酒を飲んだ。2軒目まで快調に飲み続けて友人と笑顔で別れた後、駅のトイレで酔いつぶれる。終電が無くなるまで二時間近く立ち上がれなかった。
気持ち悪くて息切れがして、ひどい状態だった。駅員さんが駅を閉める最後の見回りで声をかけにきた。そのときには少し回復していたが、とにかく情けなかった。洗面台の鏡に映る自分の真っ青な表情がひどく滑稽だった。私は何をしているんだろう。私は一体何を。
画用紙に色がひろがる夢。緑色と水色が円形ににじんでいた。余白はほとんどなくて、端の方は真っ黒に塗られている。
完成間近だったのに、黒い部分に水をこぼしてしまった。水は絵の具を溶かすことなく、紙からはみ出すようにして広がっていく。せっかくの絵が台無しになってしまうと素手で水をぬぐおうとするが、水は黒色をすべっていく。光の加減か濃さを増していく黒は、ぬらぬらと海藻のように漂っている。
やがて縁へとたどり着いた水は机の角からすべり落ちていく。私は「ああ、もうだめなんだ」と思った。絵がだめになったわけでもない、水がこぼれたことが取り返せないわけでもない、ただ、だめになってしまったんだと思った。
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ここまで書いていたのが12月の末。半年近く放置していた。画用紙の夢のこと、もう覚えていない。
言葉も出なくなってしまったから、昔聴いていた曲に、昔の私を思い出させてもらう。
嫌いな季節の話をしなくなった。嫌うほどの理由なんて本当は無かったのかもしれない。
ワダツミの木。別人の作だということは知っていたけれど、元ちとせが歌うものしか聴いたことが無かった。訃報に触れたのは私が高校生くらいの頃だったろうか。彼について何も知らなかったのに、何故かニュースを見たことをよく覚えている。
何かの折にこの動画と出会って、久しぶりに人の歌う姿に衝撃を受けた。なんて深くて広いみずうみを持つ人なのだろう。動く視線の先に、何を見ていたのだろう。
「ここに居るよ、あなたが迷わぬように。ここに居るよ、あなたが探さぬように。」
純粋すぎて言葉を失くす。
悲しみも苦しみもずいぶん薄まってしまって、視界の中の何にも焦点を合わせずに茫漠とした世界を生きる。
あなたの明日が少しでも辛くないものでありますように。