あまぐもくんのこと

もうずいぶん前のことだけれど、あまぐもくんという子とTwitterで知り合ったことがある。

何がきっかけだったかは覚えていない。私は(今以上に)とんでもなく暗い、自意識しかないようなツイートをし続けていて、あまぐもくんは自分なんて無いような、とてもさっぱりした、でもどこかさびしいツイートをする人だった。

いいねはお互いに押していたけれど、直接リプライを交わしたことは数回しか無い。だからあまぐもくんについて知っているのは断片的なことばかり。私の一つ年下で、バイセクシャル性自認はたぶん女性、GRAPE VINEと小説が好き、普段何をやっているかいまいちよく分からない。いつもなんとなく辛そうだった。

 

当時私はTwitterのアカウントを作っては消し、作っては消しとよくあるメンヘラムーブを繰り返していたのだけど、あまぐもくんのことはアカウントを作るたびにフォローしなおしていた。苦しい気持ちは私以上にあるだろうに、それを他人事みたいに書いて、自分の感情なんて無いみたいに振舞うあまぐもくんに興味があった。

共通点もほとんどなかったけど、お互いいつ死んでもいいと思っていたような気がする。

 

いつだったか、何かのきっかけであまぐもくんもアカウントを作り直したとき、互いにフォローもフォロワーも1人になった時期があった。それでもお互い相手に向けた言葉はほとんど発さずに、宙に向けて言葉を放り続けた。やっぱり私はねばついた、あまぐもくんはさっぱりした言葉だった。

その時だったか、私に「落ち込み方が似ている」と言ってくれたことを覚えている。

お互いしかフォローしていない状態はだいぶ長く続いていたけど、いつの間にかどちらかがアカウントを消して終わったような気がする。

 

そもそもあまぐもくんは、あまぐもくんじゃなかった。Twitterの表示名も違っていた気がするし、私の電話帳には16という名前で登録してある。

いつだか私がとんでもなく落ち込んでいた時に、電話に付き合ってくれたことがある。私がなんて呼べばいいだろうと尋ねると、あなたの好きに呼んでほしいと言った。そんなこと言われるとは思ってなくて、Twitterで他の人が彼女をそう呼んでいたから、とっさにあまぐもくんと呼ぶことにしてしまった。電話で何を話したかもほとんど覚えていないけど、今でもたまに、他の呼び方をできればよかったなと思うことがある。

 

あまぐもくんは何年も前にアカウントを消してしまって、それ以来連絡を取っていない。

今どこで何をしているだろうかと、たまに考える。そもそもそんなに話したこともないから、また話したいと思うわけではない。

でも、どこかに居てくれたらいいなと思う。またあまぐもくんの言葉を見られたらいいなと思う。すこしでも苦しくなくなっていればいいなと思う。